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皮膚病のはなし

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皮膚病のはなし

紫外線のはなし

桜が散り、もう五月です。五月は気温もまだ高くなく、気持ちの良い暖かさの日々が続きますが、紫外線には要注意の季節です。六月の夏至が太陽高度が最も高く紫外線が一番多いのですが、五月には七月と同じ量の紫外線が降り注ぎます。しかし、七月と違って皮膚がまだ日差しに慣れず敏感なため、過剰な紫外線障害を受けやすくなるのです。


五月の紫外線障害は海水浴の日焼けとは異なり、湿疹を発症するのが特徴です。顔や腕が赤く腫れて痒くなります。この時期に小学校では運動会が開催されますが、毎年日光湿疹を発症して皮膚科を受診する人が後を断ちません。健康を害するだけの五月の運動会は、ぜひとも止めていただきたいですね。
さて、美白ブームもあってか紫外線を過剰に悪者扱いする人が増えています。ご自身が日光には絶対に当たらないようにするだけでなく、小さなお子様にも日焼け止めを塗っているのをしばしば見かけます。本当に紫外線は悪者なのでしょうか?


人体への紫外線の作用は、皮膚のメラニン色素の合成を促進させるほか、ビタミンDの合成に関与します。紫外線をほとんど浴びていないお母さんから生まれたお子さんにはビタミンD欠乏症が多く、しばしば爪や骨の変形がみられます。


さらに紫外線は過剰な免疫反応を抑制する効果もあり、アトピー性皮膚炎や円形脱毛症に紫外線治療が用いられています。適度な日光浴を行うことはアレルギー疾患の発症を予防する効果もあるのです。適度に紫外線を浴びることは免疫力を高めて皮膚がんや内臓のがんの発症を予防する効果もあります。
とはいっても、過剰に紫外線を浴びることには注意が必要です。日焼けだけでなく、皮膚の老化も促進されます。過剰な紫外線で免疫力が低下すればヘルペスを発症したり、内臓がんにかかりやすくなったりします。ある種の血圧の薬などは、内服することで紫外線に対する過敏性が増すことがあります。
なにごともほどほどが寛容です。紫外線に当たりすぎても、当たらなすぎても良くありません。日焼けしそうなときには早めに日焼け止めを使用し、日焼けしてしまったときには、皮膚を冷却して早めに皮膚科で治療してもらってください。

皮膚がん

皮膚がんには皮膚より発生する上皮がんと色素細胞から発生する黒色腫などがあります。
上皮がんの多くはイボから発生します。黒色腫はシミから発生します。
いずれも早期に発見して切除手術を行えば、容易に完治します。
しかし、もし進行して転移を生じた場合には難治性で、生命予後を危うくします。
当院では多くの皮膚がんの手術を行っていますので、なにか気になるできものがある場合には、なるべく早めにご相談下さい。

イボ

イボはウイルス感染により発症するもので、通常型のイボと扁平疣贅・ミズイボなどがあります。
イボは皮膚の小さな傷からウイルスが感染し、徐々に増殖するとともに、次々に他の部位に伝染・拡大します。
通常のイボは、当院ではクロロ酢酸の薬剤にて焼却する治療を行っています。大きく、難治性のイボは切除手術を行うこともあります。
ミズイボは専用のピンセットにて摘除する治療をしています。放置した場合にかなり多発することもありますので、なるべく早めに治療を行うことをお勧めします。

シミ

シミには肝斑(表面的で境界不明瞭)、雀卵斑(そばかす、小型で多発)、後天性真皮色素沈着症(やや深く境界明瞭)、光線性色素斑(浅く境界明瞭)などがあります。
シミの治療法には外用剤・内服薬・レーザー治療などがあります。
外用剤は美白剤としてハイドロキノンやコージ酸が配合されたものを使用します。
内服薬はビタミンCやトラネキサム酸を服用します。
レーザー治療は、当院ではアレキサンドライトレーザーにて治療します。
肝斑では治療後に再発または増悪しやすいのでレーザー治療は禁忌とされています。
レーザー治療は浅いヤケドを生じる治療のため、治療後は数日間テープなどで保護する必要があります。

尋常性乾癬

成人に発症する慢性皮膚疾患の代表が乾癬です。体のあちこちに慢性に経過する紅斑を多発します。
落屑を伴うことが多く、しばしば全身性に多発します。
肥満・糖尿病・高脂血症などに伴って、皮膚に発生した炎症反応を抑制する因子が作用しにくくなります。そうなると炎症が歯止めがかからなくなり、慢性に湿疹が持続するようになります。ブレーキが効かなくなった車のようなものと考えて下さい。ブレーキの効きを悪くするのが肥満や糖尿病です。
外用剤による治療でもある程度は改善しますが、通常は内服薬を使用しないとなかなか治りません。
重症化すれば全身に紅斑を汎発することもあります。
肥満・糖尿病などの生活習慣病を背景に発症する代表的疾患ですので、全身的治療が重要な皮膚疾患です。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は小児に多いアレルギー性疾患ですが、しばしば成人になって症状が悪化することがあります。原因はウイルス性胃腸炎によることが多く、牛乳など胃腸への刺激が強い食品の影響で悪化します。日本人には乳糖を分解する酵素が少ない人が多く、生の牛乳の長期摂取は慢性胃腸炎の原因となり、それに伴ってじんま疹などの皮膚のアレルギー症状が現れます。さらに、腸内細菌叢の異常を来すことにより、正常では腸内で合成されるビタミン産生が少なくなり、その結果ビタミン不足が生じて、特有の乾燥症状と汗の刺激に過敏な皮膚病を発症します。
治療は、皮膚症状の改善には外用薬を使用しますが、腸内細菌叢の異常とそれに伴うビタミン不足を改善するためには内服薬を服用する必要があります。生の牛乳の接種は慢性の胃腸炎の原因になるため少量に抑えるのが良いでしょう。

じんましん

じんま疹は皮膚の代表的なアレルギー疾患で、主な原因は胃腸炎による粘膜障害です。特定の食物が原因であることは稀で、ウイルス感染や薬剤などにより胃腸粘膜が障害され、分解されない食物成分が血液中に吸収されることで反応が起こります。胃腸粘膜が弱っていることが主な要因のため、以前食べても問題なかった食物でも反応することがあります。飲酒は重要な胃腸刺激の原因になります。ピロリ菌などが原因で年余にわたって症状が持続することもあります。治療はアレルギー反応の抑制と胃腸炎の改善の両面から行う必要があり、香辛料やアルコールなどの刺激物は避けます。一時的に改善しても再発しやすいため、適切な治療を継続することが必要です。

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