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これからの医療について

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これからの医療について

これからの医療における皮膚科の役割

二十一世紀も四半世紀が過ぎ、これからの医療はどのようになっていくのでしょうか?
ときおりニュースで流れる大病院が高額な医療機器を導入したという話や、ドラマで腕のいい医師が難しい手術を難なくこなしていく話は見ていて楽しい気持ちになります。しかし、みなさんはご自身がそんな高額な医療機器を使って難しい手術を受けたいと思いますか?
ドラマの話であればともかく、自分自身としては重篤な病気に罹って、成功率も低く、高額な治療を受けなければいけなくなるようなことはできれば避けたいと思うでしょう。
診療所で皮膚だけを診てもらい、安価な治療だけで症状が改善するというのは、いかにも地味でドラマの題材にもならないのですが、むしろ多くの人々は自分だったらそのような医療の方が良いと思うのではありませんか?
病気を早期に発見し、軽症のうちに治療することこそがこれからの医療に必要なことだと考えます。

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早期発見・早期治療を行うためには

医学はますます進歩し、高額な医療機器や医薬品が開発されています。しかし、一方で高齢社会が進み、国民医療費が急速に増大していることにも注意しなければいけません。
厚生労働省は国民医療費を抑制するために、健康診断を普及させたり、安価な後発医薬品の使用を推奨しています。しかし、それではいっこうに医療費の抑制ができません。相変わらず「薬漬け」「検査づけ」と言われる医療がまかり通っているからです。
そもそも、なぜこのような医療がまかり通っているのでしょう?
それは自分の診断能力に自信が持てないから検査に頼る医師が増えていることと、患者の根本的な異常が理解できないから、血圧や糖尿など患者の示す症状のそれぞれに対して対症療法を行う医師が多いことによります。このような状況を改善しなければ国民医療費の増大を抑制することはできません。
大学病院では医師に成り立ての新米医師はやたらと検査をする傾向があります。自分の診断に自信がないので、検査で確認しようとするのです。
自分の診断に自信があれば不要な検査をする必要はありませんので検査づけにはなりません。
高齢者の治療にやたらとたくさんの薬を処方する医師がいます。高齢者は高血圧、糖尿病、心疾患、腎疾患などさまざまな臓器に異常がありますので、それぞれの異常に対して薬を処方すれば必然的にたくさんの薬を出すことになります。しかし、患者の根本的な異常が高齢化によるものと分かれば、それに対する治療を優先することで各臓器への治療は省略することができます。そうすれば薬漬けの医療にはなりません。
国民医療費の増大を抑制するためには、従来の金をかけた手厚い医療から方針転換をする必要があります。
従来の検査づけ、薬づけの医療から方針転換するには、病気を早期に発見し、軽症のうちに治すことが求められます。そうすれば高額な検査や手術・治療を行う必要が少なくなります。
病気を軽症のうちに発見して治療するには、皮膚の異常を見つけることが有効です。なぜならさまざまな全身の異常は検査よりも早期に皮膚に現れてくるからです。皮膚の異常を見つけるには高額な検査機器も要らず、安価で痛みもありません。皮膚の異常を早く見つけることができれば検査づけ、薬づけの医療から脱却できるのです。このように地道な皮膚科診療の発展がこれからの医療に重要な役割を担うと思われます。

診療に人工知能(AI)の利用

皮膚疾患をより高度に正確に診断・治療するために、当院では皮膚科診療に人工知能(AI)を利用しています。
AIは近年開発が盛んに行われており、医療の分野でも応用が進められてきています。AIを利用することで、従来は医師の経験やカンで診断や治療がなされてきていたものが、より正確で高度な診療に進化させることができます。
当院では院長が独自に開発した皮膚科学に特化したテキスト解析型AI診断ツールを利用しています。これにより、患者の症状を入力することで約2000に及ぶ皮膚疾患を瞬時に検索して正しい診断を導くことができます。さらに、それに対応する適切な治療法が表示されます。
AI診療はこれからの医療の標準となっていくと思われます。

カルテを全面開示すること

当院では開院時より患者様へカルテの全面開示を行っています。
カルテには患者様の主訴・病歴・臨床症状・検査所見・病名・治療内容・指導内容などが細かく記載されています。
医師は診察したときには速やかにカルテを記載することが法律で定められています。みなさんは自分の病状について詳しく記載されているカルテを見せて欲しいと思うことはありませんか?
患者様がご自分のカルテを見ることは、自身の病状や病名、治療内容などを確認するためにとても重要なことです。しかし、カルテを全ての患者様に開示している医療機関はほとんどありません。カルテを患者様に開示するためには、医師はカルテへの記載を十分に丁寧に、しかも患者様にも分かりやすく記載する必要があります。
しかし、多くの医師はカルテを略語・外国語などを交えて、ほとんど殴り書きの様な記載しかしていません。診断もいいかげんなことが多く、これではとても患者様にカルテを見せることはできませんね。
当院が全面カルテ開示を行う上で注意したことは、カルテを患者様の立場で日本語で病名や治療内容・指導内容を丁寧に記述することでした。
当院では1999年の開院当時にようやく開発され始めた電子カルテをフルに活用することで、このようなカルテの全面開示が実現しました。カルテを全面開示することで、患者様だけでなく、家族も病名や診療内容を確認することができ、治療への信頼性を高め、治療効果を上げることができるようになりました。

院内処方について

現在は厚生労働省の指導もあり、多くの病医院が院外処方を採用していますが、当院では開院以来お薬は院内でお渡しする院内処方を採用しています。
院外処方はかかりつけ薬局によりお薬の管理が可能なため、処方薬の重複や併用禁忌などに対応しやすいため、厚労省は院外処方を行うことを推奨しています。
さらに、院外処方は医療機関での薬剤の管理が不要なことも医療機関側のメリットとなっています。
しかし、院外処方は院内処方に比較して、医療機関で診察を受けた後に薬局で処方を受けることから、患者様には二度手間になり、受診にかかる時間が長くなります。さらに院外処方では院内処方では徴収されない調剤に関する各種手数料がかかりますので、患者様の負担が増加します。とくに皮膚科外用剤は薬局で外用剤を調整して処方することが多く、調剤料の加算が多くなります。
例えば2種類の軟膏を混合して調剤する場合には、
調剤基本料1 42点と薬剤服用歴管理指導料    57点に加えて、
外用薬調剤料(2剤)    20点(10点×2)
一包化加算(混合)    10点
特別調剤加算(混合)    15点
が加算されることになり、院外処方での患者負担は144点(3割負担で430円)の負担増になります。
さらに院外処方ではきめ細かい処方内容の変更・調整が難しくなり、しばしば薬局側の都合で処方内容の変更が行われることもあります。
そのような理由から、院外処方にはメリットもありますがデメリットも多く、とくに外用剤を主に処方する皮膚科診療所ではデメリットが多いため当院では開院時より院内処方を採用しているのです。
院内処方は、薬局に寄らずとも会計が一度で済むため受診にかかる時間が短く、診療費用も少なくて済むことから多くの患者様に好評を得ていますので、当院は引き続き院内処方を継続したいと考えています。

がんの治療は進歩しているの?

がんはかつては不治の病として恐れられていました。がんに罹れば治せなかったのです。
しかし、現在は手術の技術が進歩して、抗癌剤治療も有効性が高まってきて、がんは不治の病ではなくなってきています。ノーベル賞を受賞した本庶佑先生の開発したオプジーボも有名です。
では、本当にがんの治療法は進歩していると言えるのでしょうか?
手術の技術が進歩して成功率が上がっているといっても、やはり手術は体力的にも金銭的にも負担が大きい治療法です。内視鏡や腹腔鏡による手術は、以前のような開腹手術よりも手軽で傷も目立ちませんが、再発や合併症が起こる可能性はあります。
抗癌剤は進歩しましたが、たとえばオプジーボは1本31万円もします。他の抗癌剤もほとんどがかなり高額です。抗癌剤は副作用が強く、苦痛も大きく辛い治療法です。
がん治療が進歩しているのは確かですが、できればがんにならないようにしたいとは思いませんか?
そのようながんの予防医療は、進歩はしているものの、あまり目立ったものはありません。
しかし、がんを予防することは手術や抗癌剤に比較して苦痛も少ない。がん治療にかかる費用が節約できれば、国民医療費を削減することもできます。このように予防医療は患者本人にとっても負担が少なく、医療行政にとっても望ましい治療なのです。
がん予防のポイントは、がんの発症を促進する因子を避けることとがんの発症時に見られる徴候をできるだけ早く見つけることです。
がんの発症を促進する因子としては喫煙や発癌物質などが有名です。
がんの発症時にはしばしば皮膚にさまざまな徴候が現れます。そのため皮膚の異常を早期に発見することはがんの予防に有用なのです。
皮膚科は内臓癌の治療に関わることは少ないのですが、皮膚の異常からがんの発症を予防することに貢献したいと思います。

いい皮膚科医とはどのような医者なのか?

ある新聞に掲載されたコラムに、現役皮膚科開業医の書いた「いい皮膚科の選び方」というのが載っていました。
それによれば、ホームページを確認して、皮膚科専門医がいるかを確認する。電話で受付の対応が良ければいい皮膚科の可能性が高い。
受診前に経過や症状をまとめておく、聞き上手で、しっかり診察し、説明が丁寧なことがいい皮膚科の条件です。
皮膚科とそば屋は混んでいる方が安心、などとおおむね一般的な内容が記載されていました。
至極もっともな意見で納得させられる点もありますが、いささか反撥したくなる点もあります。
まず世間の人々は医者にかかるときに、いったいなにを求めて受診するのだろうか?
「奥さん、いつもきれいだね。今日は人参が安いよ」などと言ってお世辞や愛想を振りまいてくれる医者を求めるのでしょうか?
まさか八百屋じゃあるまいし、そんなことを求めて病院を受診するような人はいないでしょう。
もちろん受付や会計の対応が良く、説明が親切丁寧で、待ち時間が少ないに越したことはないとは思うが、最重要な点ではないと思われます。
では、最重要な点はなんでしょう?
皮膚科に限らず「いい医者」とは、病気を正確に診断し、速やかに治せる医者なのではないでしょうか?
診察も説明もぶっきらぼうで愛想のかけらもなくても、診断や治療が確実で、早く治せる医者がいい医者なのではないかと思われます。
私も多くの医師を知っていますが、愛想が良くて、人当たりが良い医者にあまりいい医者はいないように感じています。そのような医者は愛想を良くすることで、自分の診断の間違いや治療の失敗をごまかそうとしていることがあるからです。
なかなか症状がよくならないな、と思って受診したところ、医者から「いやー、すっかり良くなったね」と言われれば、そうなのかな、と思ってしまうものです。
真面目な医師は、患者が治療法に不満がある場合には、真摯にその話を聞いて解決策を考えるものであり、すっかり良くなったね、などと言って煙に巻くようなことはしないものです。
詐欺師など下心がある人間の方が、しばしば愛想良く近づいてくるものです。
受診前に経過や症状をまとめておくことについては、皮膚科は皮膚症状をしっかり診察するのがもっとも重要で、症状の経過などはそれほど必要ではないことが多いので、あまり丁寧にいままでの経過をまとめて提示されても、ほとんど診察には役に立ちません。
説明が丁寧なことについては、多くの患者さんは病名を言っても分からないだけでなく、丁寧な説明をしてもほとんど理解されないことの方が多いのです。
それよりは「酒は飲むな」など、覚えるべき要点だけを明確に指示する方が理解されやすいと言えます。
混んでる医者はいい医者というのも疑問でしょう。単に要領が悪いだけのこともあります。ましてや受付の対応などは医者の技量とはほとんど関係ないので、気にする必要はないと思われます。。
皮膚科専門医がいい医者というのも疑問です。難しい専門医試験を通ったのだからそれなりの知識はあると言えるでしょうが、試験勉強に身を入れすぎるあまり充分な経験がないことが多いのです。とくに大学病院の皮膚科医は総じて経験不足でまともな診療ができていません。
当院ではニコリともせず診察して、病名や治療法を伝えるだけですので、診察は早く待ち時間もそれほど長くない。
もし、受付の対応が親切で、医者や看護師の愛想が良いのをお好みであれば、ホストクラブに行くのが間違いないでしょう。
当院ではそのような診療を求める患者様は歓迎していません。

雨傘理論(Umbrella Theory)

ほとんどの疾患は単一の要因から病態が形成されることはなく、多彩な因子が関与することが知られています。例えばウイルス感染症においても、当初の病因はウイルスでも、ウイルスが細胞に侵入して増殖し、細胞を破壊して炎症性反応を起こす過程ではさまざまな要因が関与します。治療においてはそれぞれの因子に対して治療を行う必要があります。
このような多因子による病態の形成は穴の開いた雨傘に例えることができます。例えば10個の穴が開いた雨傘を修理するために10個のパッチがあるとします。この雨傘の雨漏りを防ぐためには、1個1個のパッチを使ったのでは雨漏りは防げません。雨漏りを防ぐためには10個のパッチを全部使わなければいけません。
病気も同様です。多因子により発症した病気を治療するにはすべての因子の治療を行う必要があります。このことの理解が不十分で、疾患の治療に単一の因子の治療しか行わない医師がいますが、その場合には十分な治療効果が得られないことがしばしばあります。
雨傘理論にもとづく正しい治療法は、疾患の発症に関与するすべての因子の治療を行い、症状が改善するにつれて治療薬を減らしていくのが正しい治療法です。
当院では雨傘理論に基づいた治療を行い、疾患を適切に、より速やかに改善するように工夫しています。

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